Asian River Restoration Network (ARRN)

アジア諸国における河川再生に関する情報交換を目的とした組織として、2006年11月ARRNが設立されました。日本におけるARRNの活動は、日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN)が担います。

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JRRNからのお知らせ

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JRRNより新年のご挨拶

日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN) 代表 土屋信行

 2023年、新年明けましておめでとうございます。

 皆様は日ごろよりJRRNのネットワーク活動にご協力いただきまして大変ありがとうございます。

 昨年は「流域治水元年」の年でしたが、皆様の地域では変革が始まりましたでしょうか。なかなか実感がわかないというのが実態のような気がします。でも、変化は確実に始まっています。耳を澄まし、目を凝らしてみてください。きっと流域のどこかで誰かが何かに取り組んでいるに違いありません。私たちが取り組んでいる「水辺の小さな自然再生」活動もそうです。

 今から20年ほど前の話になりますが、こんなことがありました。

 関東地方の江戸川という川は昭和5年に放水路を開削し、下流部が放水路と旧江戸川という川に分派しています。放水路には行徳水門が、旧江戸川には江戸川水閘門が設置されています。その主な運用目的は高潮防御ですが、それに加えて水道浄水場の取水のために塩水の遡上を止めることもあり、年間を通じてほとんどの時間閉鎖されています。そのためアユの稚魚が遡上する5月の時期、江戸川水閘門の下流側には稚魚が大量に群れを成し、黒い団塊になって水しぶきが上がるほどになっていました。この地域にはこのアユの稚魚を網ですくって佃煮にして食べる習慣があり、春の風物詩になっていました。

 この鮎の稚魚の量があまりにも多いので、少しでも上流へ遡らせてやりたいと思い、水閘門の管理者に相談したところ、「水閘門は舟運のために設置されています。船の航行が無ければ開門は出来ません。」との回答でした。そこで私たちは船の航行があれば開閉してくださるのですねと確認したうえで、防災担当部署が管理していた防災用のゴムボートの航行確認と称して毎年この時期にボートを出し、新人職員の訓練もかねて毎日2回、江戸川水閘門を通過することにしました。水門が開くと同時にものすごい量の黒い塊になった稚魚たちが泳ぎだす様は壮観で、「元気に上流まで行けよ!!」と思わず声を掛けたものでした。

 この様子を管理者の国交省江戸川河川事務所へ報告をしたところ、その翌年には国土交通省の水門管理事務所の方々が単管パイプとコンパネ、ブルーシートで簡易の魚道を作って下さいました。何度か勾配や水路幅を変えながら挑戦してくださいましたがなかなかうまくいかず、結局はカヌー協会の方々も協力して、毎日、船の航行のためと称して閘門を開閉することになりました。毎年5月の連休にはアユの遡上のための水閘門の開閉を年中行事にして、一昨年他界した「おさかなポスト」の山崎さんにもご参加いただき、毎年恒例の大イベントにしてしまいました。この報告を「全国川サミット」で報告したところ、ある年、利根川の上流の漁協の方々がこのイベントに参加して「なんか最近、鮎の自然遡上の数が急激に増えている。これはいったいどうしたことかと調べたら、皆さんが鮎のために水閘門の開閉をイベントにして取り組んでいることを知りました。大変有難うございます。」というお話をいただいたのです。

 結果としてみると河川管理者が水閘門の開閉は舟運の為だけにあるというマニュアル解釈を少し変えただけで大きな変化を生み出したのです。今では、毎年5月の一定期間、船が通らなくても水閘門は一日2回開閉されています。「水辺の小さな自然再生」活動が始まる前のことです。

 この事実は流域治水を考えた時、目の前の事象だけにとらわれることなく、全体を俯瞰して物事を捉え、広い視野での取り組みが必要であることを示しています。「知の巨人」の立花隆さんは「学者も技術者も検討が進めば進むほど総合的判断力を失って、狭い分野だけしかわからない専門家になっていってしまう。」いわゆる「総合知」の必要性を説き「専門性の細分化」は文明の崩壊を招くと論じています。

 私たちは今、目前の課題解決に対し「小さな取り組み」から始め、「大きな自然再生」を目指していこうとしています。

 今年も全国各地で「大きな自然再生」に取り組もうではありませんか。大いにご活躍ください。どうぞよろしくお願いいたします。

2023年元旦

 

    
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