Asian River Restoration Network (ARRN)

アジア諸国における河川再生に関する情報交換を目的とした組織として、2006年11月ARRNが設立されました。日本におけるARRNの活動は、日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN)が担います。

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JRRNからのお知らせ

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JRRNより年始のご挨拶

日本河川・流域再生ネットワーク(JRRN) 代表理事 土屋信行

 2016年、新年明けましておめでとうございます。

 皆様には日頃より JRRN のネットワー ク活動にご協力いただきまして大変ありがとうございます。

 昨年は多くの皆様に携わっていただいた『水辺の小さな自然再生事例集』を発刊することができました。大変好評で大きな反響をいただいています。これから全国各地で河川再生に取り組もうとしている方々にとっては良い指針にもなると思います。

 昨年は河川にとって大きなイベントがありました。

 ひとつは「鬼怒川決壊」です。被害を受けられた方々にはお見舞い申し上げます。そしてこの事件は多くのことを考える機会になりました。もちろん「河川」という存在が恵みだけでなく脅威をもたらすものである事を、忘れてはならないということを突きつけました。そしてこのような河川と共に生きる日本人には、「川と付き合う作法」が有ったことも思い出させてくれました。

 今回、鬼怒川で最初に越流を起こした若宮戸の現場は、私有地であったので自然堤防が削りとられてしまったという報道を聞きました。そんなことが本当に起こってしまったのかと驚かされました。地域には昔から共同で管理してきた大切な土地が在ります。ため池や薪炭林、茅場、作業広場、畦道、街道、神社、仏閣などいずれも共有地として守ってきた場所です。明治維新後、地租改正の際に明治検地が行われ、全ての土地は誰かの所有物として登記されることになりました。この時、地域の共有物である大切な土地は、大地主や大蔵省などの名義として管理されることになったのです。このような土地を預かった大地主は地域の大切な共有物を管理する責任の重さと同時に名誉を得たのです。このような土地を所有するという事は、自己のために利用するのではなく、地域のために大切に守り後世に伝えるために所有するのだということの意義と責任が有ったのです。

 しかしその後、特に第二次世界大戦後行われた農地解放により、土地は細分化され所有されるようになってしまったのです。祠を建て、森を育て、神が宿る場所として大切に守られてきた自然堤防などの共有地でさえその歴史的意味が人々の意識から消え、所有権があれば何をやっても良いのだと、「作法」を無視したことが起こってしまったのです。

 そのほかにも河川の氾濫原に住むための作法として、河川の洪水があっても沈まない高さに盛り土をし、ここに家を建てる「水屋造り」ということも取り組まれてきました。大氾濫があったときには1ヶ月程度水が引かないこともあったので、薪炭や食料となる米や味噌醤油なども保存する蔵を造り、ここに籠城したのです。また十分な高さで盛り土ができない場合、建物の1階部分を高床構造にしたり、水が上がってきた場合に床や畳を1段高く上げられるように柱に桁材を通す穴を開けておき、氾濫の時には中二階を造る準備をしていた家もありました。洪水の時には雨戸は取り外し、水の抵抗を最大限減らすことも行いました。要は洪水とは戦ったり抵抗したりするものではなく、その存在を受け入れ柔軟にやり過ごし、恵みを最大限に受け取るものだったのです。このような地域で家を建てる時は、堤防よりも高い盛り土をすることが誰もが持つ共通の目標となっていたのです。さらには、どの家にも軒先に船が吊ってあり水没エリアでも行動力を確保できるようにしてありました。この船を上げ舟とか用心舟とか呼んできたのです。

 さらには洪水が来る前に便所として使っていた瓶や肥溜めには厚い板の蓋をし、その板が浮き上がらないように大きな石を重石として置いてから避難したのです。この石のことを「厠石」と呼んでいました。この石は漬物石よりも一回りも二回りも大きかったそうです。これが氾濫地域で暮らすことであり、災害と共に生きる文化であり、知恵であり「礼儀作法」でありました。

 もうひとつの大きなイベントは「世界工学会2015」の場でJRRNが事務局となって「河川技術が果たすイノベーションと社会貢献」という国際シンポジュウムを開催出来たことです。昨年11月28日、京都国際会館で、海外からはアメリカ、オランダ、イラン、タイ、韓国、台湾の方々から発表していただきました。世界工学会の参加者からは大変ご好評で最終報告書の発行を楽しみにしていただいています。今後整理して発表いたします。このシンポジュウムの詳報は是非ホームページをご覧ください。

 今年は、『水辺の小さな自然再生事例』を皆様と学びあう、フィールド学習を引き続き計画しています。現場の体験を通して多くの方々の体験を共有してください。

 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

2016年元旦

    
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